2018/04/27 2018/06/20
筋肉増量に大切なビタミンB6と亜鉛を血液データから考察する
ファスティングアドバイザー(1級断食指導者)
田中 裕規(断食メガネ)/ファスティング、分子栄養学、筋トレ、料理の専門家
ガツガツ筋トレを行い、タンパク質を摂っても思った以上に筋肉が増えない、、、
もっと効率よく増やすには何をすれば良いだろう?
筋肉増量を目指すトレーニーなら一度は考えた事があると思います。
筋肉を増やす為に、タンパク質摂取はとても大切であり、真っ先にプロテインや、BCAAなど摂取する事を思い浮かべますが、いくらタンパク質を摂っても筋肉を合成する酵素の働きに関わるビタミンB6、亜鉛が不足していると筋肉合成効率が上がりません。
ビタミンB6と亜鉛の状態は血液データで考察する事ができるので血液データから自身の栄養状態を把握し、今以上の筋肉量増加を目指してみてはいかがでしょうか。
ビタミンB6、亜鉛は筋肉合成に必須の栄養素
肉・魚・豆など食事から摂取したタンパク質は、胃酸、消化酵素、腸内細菌の働きによってアミノ酸まで消化⇒腸から吸収⇒各細胞内でタンパク質を合成。
この流れを経て筋肉・体細胞・血液・ホルモンなど様々なタンパク質が作られます。
つまり、牛肉だろうが、鶏肉だろうが、大豆であろうが食事で摂取したタンパク質は腸でアミノ酸まで消化・吸収し、細胞内で人間用のタンパク質が作られ、はじめて利用できる形になります。
この流れにおいて必ず酵素の働きが関わっており、タンパク質合成に関わる酵素の働きを補助する補酵素がビタミンB6、亜鉛であり、不足すると酵素活性が低下する事で吸収⇒合成の流れが低下し、効率良くタンパク質を作る事ができなくなります。
筋肉の成長に関わる成長ホルモンもタンパク質由来のホルモンなので、ビタミンB6、亜鉛が不足すると成長ホルモンの分泌量の低下にも繋がります。
タンパク質は摂取量が増えるに伴いB6、亜鉛の必要量も増えるので同時にB6、亜鉛も補わなければ効率よくタンパク質合成を行う事ができなくなります。
B6は食事から摂取する事も重要ですが、腸内細菌が作り出す栄養素でもあります。
ところがタンパク質の過剰摂取による腸内環境の悪化、カンジダ、便秘など腸内環境が悪くなる事で腸内細菌によるB6の生成能力も下がります。
つまり、筋肉を増やす上では腸内細菌を活性化させる事も重要なファクターとなります。
下記のように、ビタミンBの状態を直接血液検査で調べる事ができますが、コストを抑えたい場合、一般的な血液データで考察する事ができます。
こちらは四ッ谷のナチュラルアートクリニックで測定。
他に細胞分裂に必要なビタミンA、ミトコンドリアの働き、脂肪代謝に必須のカルニチンなども測定して頂きました。
AST、ALTからビタミンB6不足を読み取る
ビタミンB6の状態は一般的な血液検査に含まれる項目、AST(GOT)、ALT(GPT)から考察する事ができます。
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は腸から吸収されたアミノ酸を、肝臓内で別のアミノ酸に変換する酵素であり、タンパク質合成において最初に関わっています。
つまり、AST、ALTが低いとタンパク質合成が低下していると判断できます。
AST、ALTの補酵素としてビタミンB6が働き、数値が低い場合、タンパク質不足か、摂取したアミノ酸を体細胞、筋肉、ホルモンなど様々なタンパク質に作りかえる効率が低下していると判断できます。
分子栄養学的にはAST20≒ALT20以上を理想とします。
ALTはASTよりビタミンB6の要求量が高い事から、
AST>ALTの差が2以上ある場合はB6不足、
AST<ALTでは脂肪肝を疑います。
AST・ALTが共に低い場合はB6不足、タンパク質不足を疑います。
但し、肝臓の障害、炎症、激しい筋トレ後などは数値が上昇し、本来の数値がマスキングされるので、肝障害の確認や、炎症を疑うなら炎症を表わすその他の項目(間接ビリルビン、CRP、フェリチン、その他)、筋トレによって上がっていると疑うならCK(CPK)など他の項目と併せて考察します。
脂肪肝の場合、AST20/ALT30とか、ぐうたら生活がひどいとAST37/ALT68、もっと跳ね上がる場合もあります。
アスリートにおいて筋肉代謝は大切であり、AST、ALTの数値に違和感がある場合、栄養摂取の見直し、腸内環境の改善が求められます。
アスリートは男女問わずAST≒ALT 25以上は欲しいところです。
ALPから亜鉛の状態を読み取る
ALPはアルカリホスファターゼという逸脱酵素で、一般的には肝臓障害などを調べる数値で、高い場合は胆石、胆道、胆管系の問題、骨粗鬆症などを疑います。
補酵素として亜鉛・マグネシウムが関わる事からALPが低い場合は亜鉛かマグネシウム不足を読み取る事ができます。
ALPアイソザイム(酵素としての活性はほぼ同じでありながら、アミノ酸配列が異なる酵素)は6種類あり、ALPが高い場合、さらにどのタイプが高いか調べる事で障害が判断できます。
- ALP1、2:胆管、肝臓
- ALP3:骨
- ALP4:胎盤
- ALP5:小腸(血液型がB型、O型で食後に高く出る)
- ALP6:免疫グロブリン結合型、潰瘍性大腸炎
成長期の子どもは骨の成長に伴い、1,000を越える事もあります。
分子栄養学的には180~200前後を理想とし、低い場合は亜鉛やマグネシウム不足、150以下の場合、水銀など重金属の蓄積・排泄障害を疑います。
特に水銀・鉛の蓄積があるとミトコンドリア代謝・神経伝達などが阻害されるので、毛髪ミネラル検査やオリゴスキャンでミネラルの状態、重金属の蓄積を検査する事をオススメします。
ALPは亜鉛・マグネシウムの状態を反映する指標になりますが、血液検査で直接マグネシウム、亜鉛を調べる事もできます。
亜鉛、マグネシウムはアスリートにとって超重要なミネラルですので、一度検査する事をオススメします。
AST、ALT、ALPから筋肉にアプローチできるか栄養状態を読み取る
例1
下記の方はAST24、ALT16とビタミンB6不足があり、ALPが126と低い事から亜鉛不足も読み取れます。
AST24、ALT16と数値的には高めなのでそれなりにタンパクが足りていて、B6が不足しているだけに判断しそうになりますが、γ-GTが6、尿素窒素が7.8と低い事から、実際のタンパク質は不足と考えられます。
この場合、炎症があるかヒアリングで探していきます。
消化菅や粘膜、内臓など体内のどこかに炎症があるとビタミンB群、亜鉛の要求量が高くなり、B6、亜鉛をタンパク合成に回せない事で筋肉が増えずらくなるので、食事やサプリでしっかり補う事が大切となります。
ALPが低い場合、水銀、鉛など重金属の蓄積を疑い、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、メカジキ、キンメダイなど水銀の多い大型系の魚をよく食べるかヒアリング。
疲労が抜けずらいと感じる場合は、水銀の影響によってよりミトコンドリアの働きが低下している事を疑い、歯の詰め物検査(アマルガム)、毛髪ミネラル検査を行ってみても良いと思います。
例2
下記の方はAST14、ALT8と低めな事からB6・タンパク質不足と、タンパク代謝の低下が疑えます。
総蛋白(TP)7.5と理想範囲のように見えますが、アルブミンが5.1(総蛋白×Alb%=7.5×68.1%=5.1075)と高く脱水による血液濃縮によってマスキングによって高くなっているだけで、本来はもっと低いはず。
尿素窒素(UN)が10と低く、γ-GTが20と高い事で、炎症や脂肪肝を疑う事ができます。
尿素窒素(UN):γ-GTは12以上あり、尿素窒素≒γ-GTと同じくらいの数値になるのが理想。
この方の場合、タンパク質摂取不足、アルコールによる脱水・解毒障害、ラーメン・チャーハン、パスタ・パンによる脂肪肝・肝臓の炎症がないかをヒアリングします。
そして血清亜鉛を調べると84と低めであり、ALPが159と低い事から亜鉛不足が読み取れます。
このように、AST、ALT、ALPの値からB6・亜鉛の状態を推測する事ができます。
特にタンパク質の摂取量が多くなるにつれ、B6、亜鉛の要求量も増えるので、筋肉を増やしたい場合、食事やサプリでしっかりサポートする事が大切となります。
亜鉛・ビタミンB6の多い食材
筋肉を増やすにはテストステロン(男性ホルモン)が必要であり、亜鉛はテストステロンに重要なミネラルなので、栄養指導を行うトレーナーは、『タンパク質の摂取が大切ですよ。』に付け加え、
『タンパク質の合成にビタミンB6、亜鉛も大切なのでしっかり摂ってください』
と付け加えてみてはいかがでしょうか。
※簡単!栄養andカロリー計算から食事で摂りやすいものをチョイスしました。
サプリで摂るなら⇒ビタミンBバーナー
ビタミンB群に関しては、こちらの記事も。
ここからはご案内となりますが、目を通していただけましたら幸いです。
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AUTHOR
この記事を書いた人
ファスティングアドバイザー(1級断食指導者)
田中 裕規(断食メガネ)/ファスティング、分子栄養学、筋トレ、料理の専門家
ファスティングと分子栄養学の専門家/1級断食指導者/ファスティングマイスター学院・上級講師/臨床分子栄養医学研究会・指導認定カウンセラー/ファスティングサポート実績18,235人以上/ファスティングと分子栄養療法のスペシャリストとして各メディアで紹介いただいています。
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